私の手荷物検査の番になった。
腕時計、携帯、右のズボンの中の小銭等を全てトレイに乗せ、背広の上着、そしてバックを検査の台に乗せた。
私自身もゲートをくぐり、ベルトの金属の反応に身体検査を受けた後に許可が出て手荷物を取りに向かった。
すると、
『バックの中、6角レンチ!』
の声。
『あっちゃ~~~~。やっぱり見つかったか!時間がないのに。』
『6角レンチお持ちですか?』
『はい。』
『では、見せていただいてよろしいですか?搭乗券も拝見できますか?
・・・・・もう搭乗時間過ぎてますね。』
私は、慌ててバックの中をまさぐり探すが、6角レンチが出てこない。
しょうがないのでバックの中の荷物を一つひとつ出しながら、6角レンチを探した。
『すいません!今、ANA○○便のお客様を検査中なのでよろしくお願いいたします。』
と検査をしている人が無線で連絡をとっている。
私は、中々みつからない6角レンチにイライラしながら、カバンの中身を全部出した。
やっと6角レンチがみつかり係りの人に手渡した。
『トッテのない6角レンチですが、どうしますか?』
と検査の人が、上司にあたる人に大声で聞いている。
上司が向こうから合図をした。
『オッケーが出ましたから、このままお持ちいただいて結構です。無線で連絡していますから便の方も大丈夫ですから!』
と言われたが、皆さんも経験あると思うがホテルの朝の荷造りで時間をかけてカバンに詰め込んだものを30秒位で詰め込もうとするのだから、中々カバンには荷物が全部入らないのだ。
焦れば焦るほど中々入らず、段々と汗が出てくる。
太り気味で平均の人より沸点の低い私は、サウナに入っている時のように汗が出だした。
何とか荷物のをカバンに入れて、一目散に搭乗口に走ったのだ。
何とか時間ぎりぎりに飛行機に飛び乗ったのだった。
門倉専務も少し遅れて乗ってきた。
アナウンスが流れて、検査を受けている方がまだ数人いるので少々お待ちくださいとの案内だった。
私は、さっき慌てた事と走って飛行機に乗った事もあり、サウナに10分位入ったみたくに汗出まくり状態であったが、ひとり安堵し呆けていたのだ。
『皆さんも飛行機に乗る時には、ポケットに6角レンチは入れておかないようにしましょうぜ!ワイルドだけど慌てることになりますぜ~~!』