『本当に参ったな。』
前に奥歯の詰め物がとれた時に、その直後に会社の側の歯医者に行き、詰めなおしてもらおうと行くと、
『詰めるだけだとまたとれてしまうので、もう一度治療し直しましょう!』
といきなり言われて、危うく奥歯の穴を大きくされてまた、一から詰めなおしをされそうになった経験があった。
『いえ、とれた詰め物をつけてくれるだけで良いですから。』
と治療の直前で言い、何とか逃れた。
その後もその歯は、全く問題なく過ごしてきた経験があった。
『歯医者さんも商売だから、人の歯なんてなんとも思っていない歯医者もあるから、治療費が上がる事しか考えていない歯医者もあるから、どこに行けばよいのやら。』
と、考え込んだ。
八王子の歯科医医師会の役員の方々ともお付き合いがあるので、何軒かその方々の歯医者に行ってみたが、土曜日で休診だった。
『このまま、カンボジアはきついな!』
と考えながら、20歳くらいまで住んでいた八幡町の家の裏にあった歯医者の前を通ってみた。
『前の家の側だけどここの歯医者に来た事が無かったけど緊急だから行ってみよう。』
とその歯医者さんに入ってみた。
綺麗な待合室がそこにはあった。
スリッパに履き替えて、受付に声をかける。
『奥歯の詰め物と、前歯が欠けてしまったのですが。』
『そうですか?診察は、初めてですか?』
『初めてです。』
『完全予約制ですので、少しお待ちいただくようですが、よろしいですか?』
『はい!』
と云う感じで対応された。
ここまでは、何処の歯医者でも同じである筈なのだ。
その後の治療が問題と考えながら自分の順番が来るのを待った。
10分ほど待つと、
『白柳さん!』
と呼ばれ、診察室に入った。
私より少し若い位の男の先生が現れた。
『どうしました?』
との質問に今の自分の歯の状況と明日からカンボジアに行くことを伝えた。
すると、
『わかりました。』
と言ってさっそく治療を始めた。
心の中で、
『取り敢えずカンボジアに行っている間だけもってくれれば良いや!』
と考えながら治療を受けて数分経つと、
『はい、ゆすいでください!治療全部終わりました。もう来ないで良いですよ。』
と言われた。
『えっ!もう来ないで良いんですか?』
『全部終わりましたから。』
『す、凄い!本当に良心的だ。保険の適用とか考えると1回で治すのは、儲からないはずなのに!普通の歯医者さんは一度で治せることもワザと数回に分けるのに、この歯医者さんは患者さんの事を考えてるじゃん!』
私は、その歯医者さんを思いっきり信頼をしたのだった。
サワヤカなその歯医者さんは、山下歯科というのだ。
私の子供の頃からその山下歯科さんはあるのだが、今はそのご子息さんが継いでやられているようだ。
良心的な歯医者さんのお陰様で、カンボジアに何の心配もなく行くことが出来たのだ。
『八幡町の小泉産婦人科の並びの山下歯科さん、ありがとうございました!』
会社の側の歯医者とは、雲泥の差なのだ。