今から29年程まえの20歳の頃、私は物流会社の運転手をしていた。
その当時私は、2tロングのトラックに乗って決まったルートを毎日走っていた。
ある大手電機会社の部品工場のある八王子の石川の工業団地から狭山、所沢、大宮、越谷、柏、市川にあるその電機会社の営業所に修理部品を届ける仕事だ。
多分、半年ぐらいはその仕事に就いていたと思う。
当時の給料は、総額で16万8千円。
手取りは、14万そこそこな感じだった。
当時としても決して良い給料じゃなかった(笑)
そこから、決まった8万3000円を貯金をして年間で100万円を貯める事を一番の目標にした。
定期預金にして一度貯めたお金は手付かずにする事にした。
残りの5万7千円と云うお金で全ての生活を賄っていたのだ。
当時、給料日が15日で14日は毎月お金が無くなっていた。
出かける時に500円があればよい方で、どの場所でご飯を食べるか?を考えながら何も食べずに一日を終える事もあったのだ。
そんな暑い7月の14日に100円しかなくて、一日をスタートした。
どこで、食事するかではなくて、どこで飲み物を買うか?だ。
当時は、まだ飲み物の自動販売機は100円だったのだ。
狭山、所沢、大宮、越谷と周りながら我慢をして柏の営業所の前にある自動販売機で飲み物を買う事にした。
その自動販売機の中に今でも珍しいが、当時でもそこでしか見た事がない飲み物が売っていた。
『力水』
と云う飲み物だ。
飲んだことがない。
でも、何故かその『力水』を選んだ。
たぶん、ネーミングに惹かれたのだと思う。
力を貰いたかったのだ。
蓋を開けてその『力水』を口に含んだ。
とても美味しく一気に飲み干した。
そして、その時の爽快感とこの貧しかった事を覚えておこうと思った。
それ以来、私は自動販売機でこの『力水』を見つけると必ず買うようになった。
先日、調布のある場所で打ち合わせがあって出かけると久しぶりにこの
『力水』
が売っていたので、買ったのだ。
29年前は、瓶だったが今はこの写真のようなアルミ缶になっている。
今の時代は、たくさんの美味しい飲み物があって当時感じた美味しさは今の私の味覚にその感動を与えないが、一緒に忘れないでいようとした貧しい時代の良き思い出は、昨日の事のように鮮明に思い出させてくれるのだ。
当時そうやって貯めたお金は、23歳で今の弊社をつくる時の資本金になったのだ。